無題
俺もその社会の一員として、プログラマーを務めている。物心がついたころから、身の回りは全部プログラム関連の参考書とプログラム特化の機械でした。その時はもうコーディングするのが大好きでした。自分の思うままにプログラムやアプリを作るのは実に心が満たされる。作り上げたたびに親に褒められるのも理由のひとつ。故に俺はプログラマーを目指して毎日一生懸命勉強してた。やりたいこともできて、人類にも貢献できるのが俺の誇りだ。
「森田さんはやめたって。どうしたんだろ」仕事中、同僚のアスカさんは俺に話をかけてきた。
「え?本当に?」
さすがに俺も驚いた。結構いい人だなとそういう印象がある人が仕事をやめるなんて。
「先週からもうおかしくなったよ。仕事するのがだるいだの、もうやりたくないだのって」
「マジやばくね?興味がなくしたの?」
「さあ。今は家にこもってゴロゴロしているらしいよ」
「死んだな…」
もちろん森田さんは餓死には至らない。この社会では確かに働かなくても、必要なものを手に入れる。財産は共有しているから。しかし、このような生き方は人類として死んだと言っても過言ではない。なにもやらないというのは、本当に生きているのだろうか。俺は生きていないと思う。死と同然だ。人としての価値のかけらもない。その状態は長く続くときっと他人に忌み嫌われるだろう。
「前は結構気に入ったのに」
「マジで?!」
「マジマジ」
その後も、他愛もない話はしばらく咲かせて、俺は退社した。なにせよ今日は妻が出産する日だ。
俺は病院に駆けつけて、一刻も早く赤ちゃんを見たい。
「わー わー」
「おめでとうございます!とっても元気なおとこのこですよ!」
「はあ…よかった」一糸まとわぬ姿の赤ちゃんの生まれた瞬間を始めてみた俺も感動せざるを得ない。
「よかったですね、あなた」
「はい!その…ここ数日は辛かっただろ。そばに居てあげられなくてごめんね」
「ううん。赤ちゃんを見ていままでの辛さも吹っ切ったようで。」
突然、見知らぬ番号の着信が来た。でも俺は冷静に通話を取る。
「もしもし」
「こちらは共産管理委員会です。まずご出産おめでとうございます。計算上20年後数学を研究する人員が足りないためできるだけ赤ちゃんを数学好きに育ちなさい。数学関連のおもちゃや教科書一式も用意しました。三日後ご自宅に送りますので、ぜひ確認してください」
「分かりました」